-Endhits BLOG-

エンジニアご挨拶
~Endhits Studioのコンセプトについて~

Date:2017年5月24日

録音エンジニアの中村フミトと申します。Endhits Studioのスタジオレイアウト、機材セレクト、音響調整など、音に関わるすべての監修を担当しました。

スタジオを監修するにあたっては、はじめに予算や利用できるスペースなど、諸々の条件があります。その中で常に念頭においていたのは「Endhits Studioを現在の日本の音楽シーンにコスト面においてマッチさせつつ、世界に通用するサウンドが得られる場所にする」ということでした。

スタジオの機材面のコンセプトは「モダン・ビンテージ」です。
私も他の多くのエンジニアと同様にオールドNEVEやAPI、UREIなどの「ビンテージ」と呼ばれるギアの大ファンです。きちんとメンテナンスされたNEVE1073のスイートなサウンドは普段音を意識しない一般リスナーにも伝わるものだと思っています。しかしながら、今回Endhits Studioにはビンテージ機器は導入せず、ほぼすべて新品の機材を導入しています。これには主に以下の2つの理由があります。

メンテナンスの問題
スタジオにおいて機材メンテナンスは非常に重要な問題です。ビンテージ機器の中にもメンテナンスが行き届かず、接触不良などで正常に動作していなかったり、経年劣化でただ単に抜けの悪い音になってしまっている場合があります。私自身、長年所属していたスタジオが所有するFairchild 670と他のスタジオのFairchild 670のサウンドの差に驚いた経験があり、その差はメンテナンスによるものでした。ビンテージ機器を良い状態に保つためには、熟練のメンテナンスエンジニアの仕事が必要であり、そこには多くの費用がかかります。

この問題を避けるためにEndhits Studioには現行製品のみを導入することにしました。
ビンテージ機器のサウンドの魅力はその回路設計やパーツ構成にあります。単に古いから良いサウンドが得られるわけではありません。

ビンテージ機材の価格高騰
現在、国内のスタジオの定番機材であるUREI 1176やLA-2A、NEVE 33609などはかなりの高値で取引されています。これらを導入していくことは、前述した「Endhits Studioを現在の日本の音楽シーンにコスト面においてマッチさせる」という目的と合わないと考えました。また、ビンテージギアはメンテナンス状況により当たりハズレもあります。

・現代の素晴らしいレコーディング機材たち

幸い、現在はビンテージの優れた回路設計を取り入れて、さらに改良したハイクオリティなレコーディングギアが数多くリリースされています。

私は個人的にそれらのレコーディング機器を「モダン・ビンテージ」と呼んでいます。(※モダン=現代の、近代の、などの意)

現在のモダンビンテージギアの中には、単にビンテージ回路を真似ただけでなく、それを改良してS/N比を向上させたもの、サイドチェインフィルターやパラレルコンプレッションなどの付加機能を追加したものなど、オリジナルよりも使いやすくなっているものも多くあります。一方では、モダンビンテージギアの品質は玉石混交な状態で、外見は似ていてもサウンドはオリジナルとかけ離れたものも存在します。

Endhits Studioでは、すべての機材を比較試聴したうえで導入を決定しました。中には海外ではポピュラーなのに国内ではあまり出回っていないものもあり、試聴するのに苦労することもありましたが、機材の比較試聴と吟味はとても楽しく有意義な時間でもありました。

その結果、コンパクトながら音楽的に選択の余地のある、使い方によっては世界に通用するサウンドが得られるスタジオができたと思っています。

長くなってしまいましたが、次回からスタジオの特徴をご紹介していきたいと思います。
Endhits Studioが気になった方は、ぜひスタジオに見学にきてくださいね!

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